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傘! はじめに

ぷらすにこ傘工房へようこそ

はじめまして

傘職人の北山と申します

私は現在、高級傘の製造・販売を手掛けておりますが、まずはそれに至るまでの経緯などに ついてお話ししたいと思います。

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「大量生産」「大量廃棄」

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この10年で中国製の安い傘やビニル傘の大量流通により、ほとんどが1年もつかどうか、 もしくは使い捨てのような感覚で傘が販売、消費されてます。

年間の傘の販売量は日本洋傘振興協議会の発表によると
・約1億本以上

でその半数以上が廃棄されているという統計もあり台風や豪雨の後には街中に壊れた傘が 捨てられている光景がよく広がってます。

このような現状に加えて、傘は鉄などの部材とカバーである生地の部分に合繊、ビニールな どを使用して作成されていますから、そのまま燃やすことができないので、全て埋められているのが現状です。

これらの出来事は環境問題にも発展していますから、インターネットなどで検索すると新聞記事などがいろいろ出てきますが、詳しいことは私のブログを参照してもらえればと思います。

また、日本はかつては世界一の傘の生産量を誇っていましたが、今となっては傘の消費と廃棄量で世界一という不名誉な称号を得ています。

冒頭で日本で傘を作るということについて少し言及しましたが、それに至るまでの簡単な私の経歴について書いておきたいと思います。

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「傘」との出会い

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私の家庭はあまり裕福な家庭ではありませんでしたが、割と自分が思うことを自由にしてきました

今では子供が我慢しなければならない家庭はたくさんありますが、昔はそれが顕著だったので、あまり裕福ではない家庭の子供が自由にやらせてもらえるというのは本当に珍しか ったのです。

そんなころに、小学生の時に親父と大喧嘩をして家出をしましたが、あっけなく親父に捕まって家へ戻されてしまいました。

当時は冬の夕刻でしたので、暗がりの中でバス停へと歩いていく道すがらの気持ちを今でも覚えています。

お金もなく、バス停についてバスが来ても乗ることが出来ないみじめさと寂しさにふがい なさを覚えたことを今でも覚えてます。

大学入試の直前の年末に親父を交通事故で亡くし、かなり厳しい状況の中で何とか大学には入学できましたが、アルバイトにあけくれる学生生活で留年してしまいました

留年したせいで希望の就職先に就職することができずに、仕方なしに希望しない就職先に就職していしまうことになりました

それでも、最初の就職先ではファッション雑貨の面白さを存分に味わい、ロサンゼルスに行き選んだ商品が日本で売れたりして、その時の感覚は今の商売にも役に立ってます。

その後、下町のバックメーカーに転職し、そこでは商品の企画・生産に従事し今の傘職人と してのデザインや先進性などが叩き込まれました。

そして、その後に自分でバックメーカーを立ち上げて国内の職人たちと OEM 製品だけではなく、オリジナルの商品も生産し、大手量販店に売り込んでいる中でバック業界全体が中国製の安い商品の向い風にさらされ、厳しい状況になりました

そんな苦境を何とかして脱するべく、「傘」という商品と出会い、それをきっかけとして中国での生産を始めることになりました。

初めて中国へいったときのことは今でも覚えていますが、まだ高速道路もなく、街中は自転 車が多く、どの工場に行っても工員は、ほとんどが簡素な服装で仕事をしてました。

また、傘の工場だけではなくバッグや小物の工場にも行くようになり、中国で生産して輸入するビジネスに長く携わっていた中で、コストを下げて大量生産をすることに対して、国内 生産とのクオリティの違いに違和感を感じてました。

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中国の傘工場について

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中国の傘向上は大きく3つのグレードに分けることが出来ます。

1つめは日本向けの工場で、商品に対しての検品が全品検品で非常に厳しく、日本人のスタッフが割と常駐している「A ランク」の向上

2つ目がヨーロッパ、アメリカ向けのブランド品もこなすが、検品は抜き打ちのみで出荷する「B ランク」の向上

最後の3つ目が、ロシア、中国国内などへ向けて安い傘を大量生産する「C ランク」の向上。

このように傘の工場には 3 グレードがありますが、どの工場を使うのかは国内のメーカー 次第で違いが出てきます

どこのメーカーでもできれば品質がいい A ランクの工場を使いたいですが、実際に中国に はそのような工場は非常に少なく、またコストも膨大にかかりますから、扱っているメーカーは非常に少ないです。

ただ、最近では材料のベンダーの品質がかなり悪くなってきており、工場での生産にはベン ターにかなり影響を受けます。

また、傘骨がすぐ壊れるとかパーツ関係の不良などは工場での検品作業にかなり左右されますが、A ランクの工場でも、材料の部分までは全量検品しているところは非常に少ないのが現状です

ですが、日本で商品を販売するとなると、品質が非常に重要視されますから、中国製の商品をあつかうとなるとアフターケアが必ず必要となります。

そこで私は傘修理のために傘つくりを習い始め、中国で製作した商品でも、その後のアフターケアができるように努力をしてきました。

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傘職人として

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近年、中国経済の進歩はめまぐるしく、多くの仕事も職場環境がクリーンのところが増え、 また富裕層も多くなっています

そんなところに傘工場などは日本でいうところの 3K 職場のような現状で工員が激減し、ま た経済発展に伴い給与もかつての何倍にも高騰しました

さらに材料費のコストもかなりあがってます

そんな現状にありながらも、日本での価格競争はかなり熾烈で品質の向上が置いていかれ ています。

そのような状況が続いた結果としてなかなかメーカーが思うような商品を作ることが困 難になったり、コストを下げるために発注ロットばかりが増え、それに伴い検品がおろそかになり不良品が増えるという悪循環を生んでいるのです。

そんな折に私は日本での傘作りの伝統が後継者不足で存亡の危機に瀕しているという状況 を知り、

・日本製の傘の伝統を守るため
・安心してお客様に勧めることができる商品を作るため

に、今までの実績をすべて捨てて、2 年前に傘職人として御徒町の商店街に工房を開いて傘 作りを始めることになりました

子供のころからモノ作りが好きで、新しいことを創作するのも好きなので、品質とデザイン 性を重視して日々、傘作りに取り組んでいます

また、日本製の傘は中国製の傘とは違い、長年、修行を積んできた職人が1本1本大事に作 りますし、材料の検品も全てしていますから、自分が満足できお客さんにも満足してもら えるようなものを作ることが出来ています。

それにオーダーメイド製品の洋傘ですので、修理についてもいつでもできますし、そういう 意味でも長く大切に使える傘に仕上がってます。

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洋傘の現状

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洋傘はもともとヨーロッパから明治初期に日本へ伝わってきて、当時はイギリスから入荷 した鉄骨の傘が今の値段にして1本約 100 万円くらいで入荷されてました。

フランス中世の園遊会などの資料を見ると、貴婦人が贅沢でオシャレな傘をさしている姿 が見られます。

先日、とあるバラエティ番組を見ていたところ、フランスの傘職人の女性が自分の工房について紹介してましたが、本当にオシャレで凝った傘がいくつもありました。

ですが、日本ではこのように職人が率先して傘の工房を開き、デザイン性があり頑丈で長く

大切に使える傘を制作しているところは非常に少ないのです

なぜなら、傘の職人は、ほとんどが傘メーカーで独占契約をして加工費もすべてメーカーが 決めるのが主流だからです。

そのような現状があることから、日本には自由に傘を作り、販売していくという土壌がありません。

そんな状況の中でも、少しずつ若い職人さんたちが傘の作り手として出てきています。

ただ、彼らは大手メーカーのように材料がなかなか手に入らないので、まだまだ苦労してますが、それも傘の組合が率先して改革しようとしてます

具体的にいうと、東京都洋傘組合は2年以上前から洋傘の伝統工芸品としての登録のために、 資料を集め洋傘にかかわる人間の地位向上のために努力してきました

そして、それが身を結び、2018 年の 3 月に東京都で日本の東京洋傘が伝統工芸品に登録され、このことにより日本の洋傘の品質とデザインを世界中へ発信できる環境が整備されました。

ここでわざわざ「東京洋傘」と書いたのには理由があります。

まず、伝統工芸品である東京洋傘には東京縫いで作成した素材が綿か麻か絹などの商品のことを指します

日本には傘の作り方で関東縫いと関西縫いの二種類がありますが、関東縫いは一本一本を作るのに適し、関西縫いは大量生産に適しているという特徴がありますが、そこに優劣はありません。

勘のいい方であれば既にお分かりかと思いますが、大量生産の中国製品は全てが関西縫いで作成されてます。

なぜ、このような二つの縫い方が出来たのか?は明らかになってませんが、おそらく、イギ リス製の傘は関東縫いになっていたことから、器用な日本人がより早く作れる方法として 関西縫いが考案されたのだと思います。

ただ、このような現状から、洋傘を国の伝統工芸品にすることがむずしくなっているわけです。

ただ、国内で作成している傘に限って言えば、関西縫いの傘も自分が師事した師匠から習った関東縫いの傘も非常に大事に作られてます。

また、現在傘の骨を生産するところは国内では皆無に近く、海外から材料を輸入して、それを国内で組み立てているという状況で、細かいパーツに至っては日本で作成されたものは 皆無です

その上、傘の大事なパーツでもある手元(ハンドル)も自然の木材のような、特に竹などの 元となる材料が手に入りにくくなってます。

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職人としての「信念」
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私は、まだまだ傘職人になり日が浅いので、あと 5 年しないと伝統工芸士にはなれません が、今までの経験や物の価値の見方、傘の知識については誰にも負けないと自負しております。

今年になりドバイの商社から中東で販売する日傘のオファーが来て、サンプルを作り始めてますが、このことをきっかけとして世界中の人達に日本製の傘の良さを知ってもらえればと思ってます。

そしてそれに伴い、傘つくりをしたいという若い人が少しでも増え、傘職人としての地位が 向上すれば、面白いことがいろいろできるはずです

最近では傘を作る体験教室も始めており、特に海外からくるお客さんは傘に興味を示してくれています。

こんな感じで傘職人としての仕事をして、今年で 10 年ほどたちますが、本格的に1人で傘 を作り始めたのは、2年前からですので、まだまだ職人としては未熟なところが多々ありま す。

ただ、
「いい傘を届けたい」
「本当にいいものを使ってもらいたい」
「日本製の傘の良さを知ってもらいたい」
という気持ちは誰にも負けません

そして師匠級の職人さんたちから技術を学んだり、日々、子供を育てる親のように傘つくりに真剣に向き合うことで出来た傘をお客さんに手にしていただいたときの喜びは職人冥利 に尽きます。

特にお客様が生地を持ち込んで作る傘は作り直しがきかないのと、生地の量が一本分しかありませんから、かなり神経を使い慎重に時間をかけ製作してます。

生地の素材により伸び縮みが違うのに加えて湿度によっても裁断1つで形が大きくかわっ たりしますから、出来上がったときの安堵感は非常に普通に傘を作る時よりも大きいです。

何より、作成した傘を見たお客さんに喜んでもらえた時が一番うれしいですね(笑

「本当にイイものをありがとうございます! もう北山さんの傘しか使えません! 」

なんて言われると、自分で作った傘で人を感動させられるようにますます精進したくなり ます。

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大切に傘を使うということ
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また、冒頭でも書いたように日本は現在、世界一の傘消費国、廃棄大国でもあります。

そして、それが環境問題にまで発展している中で、これを危惧した問題解決への動きも出始 めてます。

何もこれは日本だけの問題ではなく、中国でもこの問題が深刻になりつつあり、問題解決のために傘のシェアシステムが動き出してますが、まだまだ問題は山積しており、シェアシス テムが普及するまでには至ってません。

そして、何よりも、天気予報の精度がこれだけ上がっている現在においては、傘をコンビニ などで衝動買いするようなこともへり、廃棄する傘の数もなるべく少なくできるはずです。

是非、傘を使い捨てのような感覚で持たずに、良い傘を長く、そして TPO に合わせた上品 な傘をお持ちください。

それが、環境問題を食いとめること、日本の伝統工芸を守ることにもつながります。

長文とはなりましたが、是非、傘に関することは何でもご相談ください。

ぷらすにこ傘工房    北山篤

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