昭和の中頃の日傘と思われますが、とても重厚な作りで、職人の技が光る日傘の張替えの依頼を受けてしまいました。
自分の力量で張り替えられる自信がなく、色々同業者に相談して、師匠級の職人さんにも話を聞いたりして、傘の張替えを挑戦しました。
傘のサイズが今の定番のサイズと違って少し短い骨のサイズであるために、現在ついている傘のカバーを綺麗に外して型どりをしようとしましたが、このカバーがまた特殊な作り方で、レースとジャガードを織り合わせて二重に貼り合わせた生地のため、経年劣化で生地がかなり痛んでいて骨から外すだけでも苦労してしまいました。
そんなわけで型が取れなくて骨から何度か型併せしてカバーを作ることになりました。
また骨が2箇所折れていてそれを修復するのにもサビ落としを合わせて時間がかかりました。
この苦労の中でも最も大変だったのは石突きが本体に接着で取り付けてあり、これが外せないと、傘をばらすことができないので、お客様には最悪この部分を破る事になって、新しくこの部分だけ作ることになると了解を得て、分解作業に入りました。
幸い、この部分が木製のため、蒸気で温めて中の接着を溶かして外すことができましたが、この石突きは変色してしまいました。
職人さんに聞いてた話では、この傘はハンドルとつゆ先に鼈甲を使ったいて、その職人さんが張り替えた傘はこの石突き部分も鼈甲で、結局割らないとできなかったそうで、この部分を鼈甲で作るだけで10万円ぐらいかかったと言ってました。
幸いこの部分が木製だったので割ったとしてもそこまでの金額にはならなかったと思いますが、温めて変色した石突きを着色する作業はかかりました。
張り替える生地はお客様からの支給で、着尺の絽織の反物でした。
少し時間がかかってしまいましたが、なんとか張り替えることが出来て、お客様に渡すことができました。
つゆ先や手元の鼈甲の作りなどは時代を感じさせる風合いがあり、なんとかその形が崩れないように作ることはとても難しかったです。
また昔の職人さんの技術を見ることができたことは、これからの傘づくりに生かしたいです。
お客様がこの傘を手にとって喜んでいただければ、苦労も次に繋げられます。
修復できた傘の写真です。